昨晩起ったことはなんだったのか、まるで夢だったのではにかと言うくらい、翌日の朝は快晴でした。明日はヘルシンキに発たねばなりません。よめさんのお姉さんが遊びに来てくれることになり、ヘルシンキからラップランドまで一緒に旅行を楽しむことになっていたのです。
しかし、この家に引越しを終えたばかりのわたし達は、正直複雑な思いでいっぱいでした。素敵な、ほんとうに立派なお宅には違いなかったのですが。
この家を掃除してたときのこと、新しい我が家に希望を感じながらも、ちょっと家に入ったときの古い家の湿ったにおいが気になりました。でも、家中に風を通して、家主さんにも敬意を忘れず、「きっとかつての住人も、快く思ってくださってるはず・・・」と掃除にこころを込めました。。。
オッリさんのギャラリーに戻ると、なつかしいアーティスト達がやってきていました。そこには、久しぶりに超豪快・女性作家Tさんもおられました。彼女は素晴らしい作家で、奔放な水彩画は強く、美しい!今回のタイデヌーティラの展覧会ではわたしが入り口の明るい大部屋に展示し、奥の大部屋を彼女が展示します。この大きなギャラリースペースをわたしと彼女で埋め尽くすことになっています。光栄です。
それはそうとして・・・彼女の作品も超豪快なのですが、彼女のお宅がまたもう・・・・超・・・・・すごくって、何がすごいって、とにかく凄過ぎて書けないのですが、要は、片付け、清掃、とか言う概念が完全に欠落した感じなのです。古い木造の森の大邸宅、「凄まじい存在が、凄まじく創作し、棲んでいる、」という感じでした。そんな方はフィンランドでは他に見たことがありません。大抵の方はきれい好きで、美しく住まわれているのですが・・・
そんな彼女が、突如、
「あらっ、あんたたち、ちょっとくさいわよ! かび臭い!あんたたちの新しい家は大丈夫なの???」と言い出したのです。
え、そんな、服だって着替えたばっかりだし、風呂も入ったばかりだし・・・家の中に一晩置いてただけの服にそんなに臭いが移ってるってこと?ほんと???
すっかり疑心暗鬼です。
そして、まっすぐわたしの目を見据え、
「住むとこに困ったら、いつでもわたしの所へいらっしゃい!! いつでも、どんなときでもね!!」
かっこいい~!ありがとうございますぅ、
(わたしが女だったら、ホレてまうとこです・・・・って、あれ、彼女は女性でした。)
で、でも、彼女の家に・・・・・・・あ、ありがとう・・・・・・・;;;;;
どうしよう、あんなに空気を入れ替えても、洗濯しても、カビのにおいはそんなに強烈なのでしょうか。また、嫁さんは喘息持ちです。これからいったいどうしたらいいんでしょう。
白夜の恐怖
お昼青空の下、外壁を掃除してると、チョロッとカワイイのが!!
テンです。家の周りをちょんちょんと跳ね回っています。
気持ちが高揚します。実際イタチの類はたちの悪い面がありますが、見た目にあれほどカワイイ生き物も珍しい。なんだか励まされるような気分になりました。
今後の住まいのことは、やさしい皆さんが色々と考えてくださることになりました。ありがたいことです。
とりあえず今夜もこの家で泊まることになります。ちょっとテンションが下がり気味なわたしたちでしたが、気分を変えて夕方からは何にもせずに、パソコンで日本のTV番組でもみよう!ってことになりました。ささやか・・・;;;
久しぶりの日本の番組に、つい嬉しくなって夜更かししていたときのことでした。
何か違和感を覚えたのです。
なにか・・・
気配がするのです。思わず窓を見ましたが、単調な夜空は時間が静止したような表情を見せるだけです。視野がただ薄い闇に吸い込まれるようで、特別見えるものなど何もありません。
ふたりで無言のまま、でもしばらくすると、いつの間にかまた画面に見入っていました。
ー 夜更け ー
ガリッ・・・・・カリカリッ・・・・・・・・・・・・・・・・ッ・・・・・・・・
バタバタバタッ!!!!!!ドンドン、バタタタタタ・・・・・・・・・・・・・ッ!!!!!!!!!
「~!!!!????」
ここにはわたし達夫婦しかいないのです・・・
隣家は遠く離れていて他者など来るはずはありません。
毎夜まるで物音などしないのがあたり前、
湖の氷の割れる音、木の幹の割れる音、風の音、意外は・・・
不気味な物音は部屋中の壁を嘗め回すように響き続けました。それも、壁から天井へと駆け上がり、また床下まで縦横無尽に動き回るのです。
しかし冷静になったわたしはこれが相当深刻な事態であることを悟りました。
「・・・テンだ・・・」
野生動物が住み着くようになった空き家には様々な問題が既に起こってしまっていることが多い・・・
彼らは家の内壁から天井裏を住処にして走り回っているのです。しかもしなやかそうな外見とはうらはらに、なんとも大きな足音。本当にこんなことで野生で生き伸びてゆけるのでしょうか? でも野生動物のドン臭さを心配をしている場合ではありません!!
後日談・・・・
それから何ヶ月も経ったある日、
わたし達の展覧会場に陽気な奥様が
現れました。
「ハァイ!!」
「え~っと・・・どちら様でしたっけ・・・?」
するとレエナさんが、
「ヒロハル、紹介するわ、彼女、Rさんのお母さんよ!!」
上品に奥様は温かくにっこり。
「えっ・・・・・・・・・・・・・?」
「ほら!あんた達が住んでた、あの赤い家の!」
って・・・・お亡くなりだったんじゃあ・・・・
「あの、え~、以前あの赤いお宅に住まわれてた方というのは・・・?」
「そうそう、ずっと住んでたんだけど、だいぶ前に引っ越しちゃって!!
アパートって便利よお!」
レエナさん、 She was gone・・・って!
そういうこと・・・!???
わたしのこころに深く刻まれていた"あの家で湖を眺めながら亡くなられた女主人"のイメージはなんだったのか!!!!!
あ~あ。まあ、よかったんですけど。
でも、いまでも尚あの家を思うとき、
わたしの心には、あの大きな窓から夕暮れの湖を眺める、
ベッドに横たわった女性の姿が浮かぶのです。
ありありと、独特の気品と雰囲気をもって、
一枚の絵画のように。
作家の妄想の産物・・・・
白夜の怪談
おわり
香りのすがすがしいお茶を頂いたら、
次なる作家の下へ。
身の回りすべてが、彼女には大きすぎます。
思いどうりになるはずのないものばかりに囲まれて生活を
しているのです。
「あんたんとこ、最近どないなん」「どないもこないもないわ」
本当にいい子ら、でした。これじゃまったく”よめさん、山縣寛子活動日記”・・・わたくしめも色々やって、撮影もわたくし。つまり、記録には残らない宿命なのです。
釣るべし!!
大物が釣れないことも見越して用意した、ウルトラライトロッド。志が低い・・・つれないときは気弱になりやんすので。
こうなれば見事なディナーでしょう!! 食材はほとんど庭先で調達!!
シメは・・・・
作画のエスキースのために、天然の粘土で塑像を作る
メインアーティストとして個展をさせて頂くサマーエキシビションに向けて、制作追い込みです。