バンザイ!!おっしゃあ~!!山頂アタック成功~!!
ウィム「ヒロハル、俺たちやったな!!」
ジュディス「ほんっとサイコー! ヒロハル,たのしいわね~!!」
わたし「・・・でも、これまた明日、降りるんしょ・・・涙」半死
一日本人として、偉大な記録を成し遂げた。
(前もって言うと、個人的に死ぬ思いをしただけで、たいした記録ではない。涙)
私の長年の夢は、昔、初めてノルウェーに来た時の衝撃、ベルゲン鉄道の車窓から見た、月面世界のような雪面の森林限界を取材すること。
ゆっくりとした時間の中で、愛機(カメラ)と釣り竿もって心行くまで散策したい!!
その夢を叶えるべく親友たちが骨を折ってくれた!のだが…!?
。。。。。。。。。。。。。。。。?
2015年、この夏もハルダンゲに友人のウィム、ジュディスを訪ねました。互いに再会を感激しあうのもそこそこに・・・
ウィム: ヒロハル,お前が望んでた森林限界地の取材のために、
ビッグなサプライズ、用意したからな!!
わたし: え、わし、さぷらいずとか、ちょっといらんねんけど・・・
ウィム: さあ行くぜ、ヨトゥンヘイメン登頂!! お前のためにみーんな
手配済みだからな!!
な~に、5歳の子供でも出来る軽いハイキングみたいなもん
さ!!
ジュディス:たのしいわよ~!! ハーダンガーヴィッダにはさんざ行った
でしょ?ヨトゥンヘイメンはそんなもんじゃないわよ~!!
わたし: ほんまに…? またいじられてるんじゃあ・・・?
ふもとの山荘前にて。
そう、そのときはまだなにも知らなかったんです。
まさかあれに登らされるなんて・・・
「きれいだな~」と、構図をキメて撮影。気楽なもんです。
さあ、とりあえず山まで出発だヒロハル!!! 最高な気分だろう!?
たのしいわよ~!!
・・・・う・・・・・ん・・・・・・・・・・・・・・
待ってぇな、もう十分森林限界やん。わし、この情景が見たかってん。
この辺でゆっくり取材したいねん…
はっはっは~まだまだ山は遠いぞヒロハル!! GOGOGOだ!!
たのしいわよ~
だれか俺の声を聞いてくれるひとはいるのか。いや、いない。
羊と、シャイなトナカイ以外は・・・
あ、あかん、もう足、限界超えてる・・・
わたし: ほら、ウィム、昨日の雨ですっかり道がふさがれとるわ!!
残念やけど、ここらで・・・♪♪
ウィム:こんな時は難しく考えんと、GOあるのみさ!!
ジュディス:いくわよお~ たのしいわよ~!!
かえるに帰れん・・・
ヘイ、ヒロハル急げ、そんなんじゃ、間に合わないぜ!!
間に合うって、何に??
わし、なんか知らんけど、間に合わんでいいです・・・
なんか・・・
どんどんエゲツナイこと、なってきてるんですけど・・・
まじ、大丈夫なんかっ!?
足、ガックガクやし・・・
わしのフィールドワーク用のゴアテックスも、
水浸しでぐッちょぐちょでやんす
おおーい!! 助けてくれー!! 人さらいでやんす!!
ヘリだ!! おいらをたすけにきてくれたに違いない!!!
『 ああ、昨日も誰か、帰らんかったらしい。捜索隊がでとるわ。』
え・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さあ山に着いたぞ!! 仲間達と合流だ!! エキサイティングに行こうぜ!!
たのしいわよ~
仲間???
ヒロハル、気に入るぜ、おれたちからのサプライズ!!
これを、登るってか・・・!!!???
ウィム: さあ、アッタクだ!!ヒロハル最高の気分だろ!?
ジュディス:たのしいわよ~!!
わたし: あんたら、どうかしてる… 涙
山頂って、雲の上やん・・・
ヒロハル、心配するな、やつらは山岳のエキスパート集団だ!
やつらの言うことさえしっかり聞いてりゃオマエでも大丈夫さ!!
[え~、それでは登頂に際して、注意事項があります!]
「・・・」
「死んでもロープを放さないこと。以上!!」
「・・・」
一同:「いえーぃ!!!」
それ行くぜ~!!
たのしいわね~!!
あううう・・・・
す、すまん、みなさん、、、球形とかいう言葉知ってますか。。。?
最高にエクストリームだな~ヒロハル!!
たのしいわね~!!
「整列~!!」
「臆して死するか、前進し、栄光をつかむか!!
われわれにもはや選択の余地は無い~!!」
何で無いねん・・・
あるやろ
妄想も入ってますが、これほぼ、軍事演習です…)
まずは先行隊がアタックだ!
お手並み拝見と行こうぜ!!
あああ~、なんて無謀な~先行隊が天にきえてゆく・・・涙
白く光る雲満ちた空に、彼らが消えて行くよう
で、とても現実を見ている心境ではありませんでした。
成仏してください。
「八甲田山か・・・」
仲間がどんどん、白空の光のなかに消えて行きます。
~雪の神軍、氷を踏んで~♪♪
冗談抜きに、無事でいたければ、進むしかないのです。
もう、一歩も足が動かないような情況でも。
「まるで、ゾンビやな・・・」
「必ず生きて帰る、生きて帰る・・・」
事実、これだけ念じてました。
彼らにはさぞ大げさでしょうが、ロープのをつけていない情況で、雪に足をとられてひとたび滑れば、奈落の底です。まして、疲れはピークをとっくに通り越し、かかとを雪面に突き刺したくてもその力も頼りなく、全てがおぼつかないのですから尚更です。
危険な大自然の中、どこにも安全を保証するセキュリティなど無く、何処へいても自己責任が徹底された世界。
最高にハッピーな人々はその中で、今日も危険と隣り合わせの大自然に、幸福に満ちた世界を堪能します。それこそがノルウェー。
都会に住む人であっても、その精神は変わりません。
登頂成功、ただの取材では得られない、生きたノルウェー人たちの姿に触れられ感動しています。
まあ、なんとか無事でいられた安堵をかみしめてからのこと、ですが。
山頂、山小屋にて、
靴も脱げないほどばらばらになった身体を
ベッドに横たえながら、明日の氷壁降下を思い、
「絶対無事に帰る、絶対無事に帰る」
と繰り返し念じていました。
今までに無い素晴らしい取材経験を得ても、生きて戻れなくては意味がありません。とりあえずの休息を取りながらも、明日の降下は想像するだに恐ろしい。
「え~、ビール無いの~!?」
「明日の氷壁降下も、たのしいわよ~!!」
あ、あんたら・・・
最高にエクストリームな(?)友人を持てて、わたしは幸せです。
ウィム、ジュディス、心から感謝します。ありがとう。
※友人達について、少しジョークを交えて脚色してますが、事実、彼らはすべてにわたって私と妻の山縣寛子を支え、入念に準備してくれました。多大な手数と、労力をいとわず、ただ友情だけで私の夢を(ちょっとずれた形で)叶えてくれました。ただただ感謝あるのみです。
また、そんな友人たちと時を共に過ごせることに、おおきな幸せを感じずにいられません。
日本の友人達にも、ものすごい世話になってるなあ~・・・・
ありがとうございます・・・・
本当に、死を覚悟した瞬間も、撮影はしていました。そして恐怖感などミジンも感じさせない美しい世界が写っていました。
「これがまた、時間が過ぎると、いい思い出ばかりじわじわ迫ってくるもんさ!!」
それは事実でした。苦しい記憶はいつか、なぜか、どこかへ消えてゆきました。
今は早くも、皆が恋しい!!