個展初日の前夜、オープニングパーティに次々と人が集まってくださいました。懐かしい友人たちや、先生方、作家たち、そしてそこに集まった多くは、純粋にアートを愛する初対面の方々でした。
大きな展覧会になると会場に大勢ファンがついているので本当に心強いです。
フィニッシュペインターズユニオンのボードメンバーの方々を前に、恒例のわたくしの素晴らしすぎるスピーチ。
毎度、笑いあり、涙ありの感動的なスピーチ。
お聞かせできないのが誠に残念でなりません。
ああ、ほんとざんねん。
ふう~。。。。毎度これがね。。。
会場は広く、チリ一つ落ちてないほどの美しさ。ユニオンは常日頃からこの環境を大切に管理し、最大限に生かし、ハイレベルな展覧会を充実させています。
今回は日々、驚くような新しい出会いの連続でした。
バンダナの女性はカタリーナさん。会場のオフィスチーフセクレタリー。長い会期中、細やかなことまで一切を完璧サポート!!人間的にも素晴らしい方です。
ヘタさん、自然素材を用いて大変デリケートな作品を作る方です。
お会いするのは数年ぶり。来てもらえてうれしい!
親友!
トゥッカ、パイヴィ夫妻。
共に有名な若手グラフィックアーティストです。あっちこっちの美術館、ギャラリーで、彼らの作品を見ることが出来ます。
今回この大きな展覧会をサポートしてくれたのは彼ら。
彼らの提案と助言なしには実現しませんでした。
作家像、ライフスタイル、すべてが私には憧れです。
彼らは長く交流してきた家族で、来日された際もともに楽しい時を過ごしました。大御所のデザイナーであるお母さまから紹介されたご縁で仲良くなりました。
価値観がぴったり一致するので、遠慮がいりません。彼らのおすすめに従って旅を共にすれば何もかも完璧!
過去忘れられないのが、ヘルシンキのはずれの森の中、打ち捨てられた別荘地があって、そこを案内してもらった時のこと。
廃墟となったお屋敷がぽつりぽつり、美しい池々の周辺に点在していて、まさに夢の中の世界のようでした。
まだ付き合いの浅かった当時、私たちの感性を見抜き、いきなり森深くの廃墟ツアーに誘ってくれるなんて!完璧すぎます。
以来、私たち夫婦は彼らを全面的に信頼しています。
ちなみにその廃墟付近は立ち入り規制のある場所ではなかったものの、マニア以外は入り込まない隔絶された場所でした。
※マニア(水中生物学者・植物学者・廃墟マニア・あるいは単なる変人)
突如 「銃を捨てろ!!」と大声がしました。全身に電気が走り、サスペンス映画の一シーンが頭をよぎりました。
身をひそめながら森を抜けると銃を持ったアーミーがずらり!!
なんと、軍隊が演習中でした。
その場で厳重なチェックを受けたことは言うまでもありません。
オープニングパーティの後は
「飲みまっせー!!」
しかし、地ビールのうまいこと…!!
楽しい時間はあっという間。
そして私は連日の疲れと刺激と、皆さんへの感謝でなんもかもいっぱい、いっぱいで…!!
私に体があと5つくらいあったら…
「おい、寝るのは早いぞ!!」
「次、行くわよ!!」
Helsinkiナイトは更けてゆきました。
最近できたので、ここは今回初めて。
新図書館、OODI オーディ。
世界最高の図書館に選出されたらしいが、いや、ほんと、素晴らしい!!
ちなみにこの2週間後にはコロナで閉館してしまうことに。
レンズが歪んでいるのではなく、天井が歪んでいるんです。
これは驚き。
子供の遊び場などもあり、ベビーカーも置く場所がさりげなく完備。絵本を読み聞かせる母親、カーペットをはしゃいで這いずり回る子供たち。
なんて開かれたファシリティーなんだろう、と感心。
ただ、その後コロナの緊急事態宣言で、果たして子供の遊び場の管理等はどうあるべきか、考えさせられることに。
福祉大国は伊達じゃない。
いつも感じる、「この国は、お母さんが育む!!」
どこぞと違い、ヘルシンキは良いギャラリーがいっぱい!!
ガレリア ランカ
旧工場を利用した大きめの展示空間。
かなりスパルタンな空間なので、この物質感に打ち勝つ、または共鳴できる絵画作品は相当限られたものでは、と思う。
ランカは2階、1階はGALLERIA Huuto
以前、フートはヘルシンキのギャラリー街に独立した会場を持っていたが、現在はこの建物の中のみ。ユニークだが展示はかなり難しい、ある意味センスの問われる会場です。
タイデハッリはこじんまりしているが、素晴らしい美術館。
今回はアヌ・トゥオミネンの展覧会。
尊敬するタルヤ・ピッカネン・ウォルター先生がおすすめされていただけあり、内容は満足。
ちなみに来年の2月ごろ、タルヤ先生もここで個展をされる予定。絶対行かねば。
なぜ私がそんなにこの展覧会を楽しめたのか…?
なに、これ!
なんだ、けしごむあつめただけか。
靴下…???
それで… それが、なに???
ううう~ん。。。
ううう~ん。。。
ちびた消しゴム、ちびた鉛筆、浜辺の小石、
さびた鉄くず、割れた皿 ...........
そんなの集めて何になる…
これでアートなら、誰でもできる…
履けない靴下編んで何になる…
でもみんなが笑ってる。みんなが楽しんでる。
会館を待ちかねた子どもたちから老人まで、みんなが理屈抜きにその表現空間を満喫している。
私も妻の山縣寛子も、心からこの展覧会を楽しみました。
私たちは眉間にしわを寄せて映像作品を観るより、博物館が大好き。
アヌの作品は思い付きの即席で作られたものではありません。
個展を観るまで分かりませんでしたが、あの作品群は長い長い日々を紡いだ結果であり、彼女の極めて当たり前の日常の集積によるものだと思います。
よく、「どう自分の作風を見出したらよいかわからない。」という声を聞くことがありますが、「まず、なにか始めてから言いな!」と言いたくなります。
そういう質問者は、意外と高い理想を口にするもの。間違っても ”消しゴム集め” や、”石ころ拾い” なんてばかばかしくてやろうとはしません。
「アートになりそうだからやる」「自分の理想とは違うからやらない」
ともにつまらないことだと思います。
私はそんな自分の過去を恥じるから、そんな人たちに厳しい。
でも、アヌの作品はそんな人たちにもやさしい。
自然な好奇心が勝手に導いた結果が、独自性を作り出している。だから彼女の作品はすべての人に、やさしい。
誰より確固としてプロなのに、
「好きなことに夢中になることに、プロもアマチュアも関係ないでしょう。」
彼女の膨大な作品群は、そう語りかけてくるようでした。
Helsinki 森井宏青展 2 へ続く